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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1407号 判決 1969年4月17日

控訴人(附帯被控訴人) 浅見孝之助

右訴訟代理人弁護士 平本祐二

同 小川修

同 日佐戸輝一

同 佐藤孝

被控訴人(附帯控訴人) 清水甲子二

右訴訟代理人弁護士 宮田耕作

主文

本件控訴を棄却する。

控訴人は被控訴人に対し別紙物件目録記載の土地につき売買による所有権移転登記手続をなせ。

控訴並びに附帯控訴の各費用はすべて控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに「附帯控訴棄却」の判決を求め、被控訴代理人は「控訴棄却」の判決並びに附帯控訴として請求を拡張し「(一)、控訴人は被控訴人に対して別紙物件目録記載の土地につき売買による所有権移転登記手続をなせ。(二)、予備的に、控訴人は被控訴人に対し、右土地について同人のため千葉県知事に対し売買による所有権移転の許可申請をなし、この許可を条件として売買による所有権移転登記手続をなせ。(三)、訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の関係は、次のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここに、これを引用する。

(被控訴代理人の陳述)

一、附帯控訴について。

別紙目録記載の土地は既に農地としての資格を失い、現況は宅地となっているから現在農地法第五条による許可申請手続は不要になった。

右土地は流山駅に近く、裏は道路をへだてて直接駅構内に接しているが、流山市(当時は町)は市の発展計画の中核として右土地を含む附近一帯に市街地の造成を計画し、区画整理事業を施行するに至った。千葉県もこれに協力し、同市発展のため市街地を縦貫する大県道建設を決定した。昭和三八年県道建設がはかどり、県および市は道路沿線の土地所有者に土砂を提供して県道建設と同時に農地を宅地化するよう協力を求め、かくて前記区画整理により買収された農地はすべて宅地化されたが、前記土地も県道との高低差が二米近くになり、池のようになってしまい、そのまま放置すれば道路建設のため石垣を組む必要があるばかりでなく、道路ぞいの下水溝建設も不可能になるため、被控訴人は既に亡文吉の承諾を得てもいたので土を入れ宅地化したものである。

同区域内の、殊に県道ぞいの土地所有者は殆どすべて知事の許可を得ることなく農地を宅地化したが、区画整理完了後も登記簿上農地のままの宅地が数多く存在し、流山市の地目変更許可申請手続をとるようにとの呼びかけにも、市民は費用と手数を措しんで応ぜず、法務局の現状確認により地目変更登記を得ているのが実状である。

前記土地区画整理事業は昭和四二年一〇月一四日完了し、同年一一月八日換地処分による登記がなされ、従前の東葛飾郡流山町字根尻郷一七五番一、畑六六四平方メートルの本件係争地は別紙目録記載のごとく表示されるようになった。

以上の次第であるから、被控訴人は附帯控訴として従来の請求を拡張し、第一次的に無条件の移転登記手続の履行を求め、予備的に、従来の請求である、知事に対する許可申請手続の履行とこれを条件とする所有権移転登記手続の履行を求める。

二、牛乳代金の支払について。

亡浅見文吉は昭和三四年七月頃から健康保持のため牛乳を継続して飲用したい旨を申出でたので被控訴人はこれに応じて代金は盆暮の年二回払の約定で牛乳を配達するようにした。同年暮集金に訪れた際亡文吉は本件土地を買って貰いたいようなそぶりをみせていたが、牛乳代については来年まとめて支払うということであった。昭和三五年九月二二日土地売買契約を締結したが、その際に牛乳代金支払の約定をしたわけではなく、同三六年三月六日土地代金を倍に増額値上げしたときにはじめて牛乳代金と土地代金と相殺の話が出たが、亡文吉は牛乳の継続飲用の希望を洩らしていたていどで右相殺について確たる取りきめはせずに終ったものである。その後土地代金二五〇、三〇六円を支払う一週間位前の昭和四一年四月中旬になって亡文吉より一応今までの未払牛乳代金を土地代で相殺清算して欲しいと申出があったので同月二三日に昭和三四年七月から同四一年三月までの未払牛乳代合計金四三、六九四円と土地代金を対等額で相殺したものである。

三、土地代残金供託の事情について。

被控訴人と亡浅見文吉間において土地代残金二三万円については、昭和四一年五月から毎月末日限り金二万円以上を支払い、できる限り早急に完済する約定であった。ところが亡文吉名義の昭和四一年五月一二日付内容証明郵便並びに同月一五日控訴人が右文吉を代理し口頭をもって、いずれも前記土地売買契約の成立を否認し、既払の土地代金は借用金であるから利息を付して返済すると称し、あらかじめ土地代残金の受領を拒否してきた。そのうえ控訴人は被控訴人が亡文吉と会うことを拒むので被控訴人としては売主である文吉の真意を確めるすべもなく、止むなく同月一八日本件土地につき処分禁止の仮処分をなしたところ、これに対し文吉名義で起訴命令の申請がなされたので本訴を提起するに至ったものである。以上の如く裁判外の話し合いは不可能となって訴も係属したし、文吉側ではあらかじめ土地代残金の受領を拒否し、提供しても受領を拒否されることは明らかであったから、被控訴人は現実の提供をなさずして土地代残金を供託するに至ったものである。

(控訴代理人の陳述)

一、原判決における重大な法解釈の誤りについて。

原判決は本件係争土地が既に農地から宅地へ事実上変更されているから農地法第五条による県知事の許可は不要であると認定した。

しかし仮りに原判決認定の如く控訴人の先代亡浅見文吉と被控訴人間において本件土地の売買契約が成立し、その後土地が事実上農地から宅地に変更され且つその地上には建物まで築造されたことがあるとしても(但し、右建物は控訴人の請求により撤去された)、それをもって農地法第五条の許可が不要になったと断定することは早計である。なぜなら本件土地を埋立て宅地としたのは控訴人側ではなく、被控訴人である。前記売買契約が成立したとしても、当時本件土地は畑地であったため、県知事の許可を停止条件として行われたものである。したがって土地売買契約も、その許可あってはじめて効力を生じるもので、買主たる被控訴人にとり、右許可のある以前は契約上所有権を取得し得るという一種の期待権の如きものを有するに過ぎない。しかるに被控訴人は売買契約の効力が発生する以前に、所有権の取得のないまま無権原且つ控訴人側に無断で昭和三八年一一月頃より翌三九年二月頃までの間に農地を埋立て宅地化したものである。この被控訴人の行為は専ら右県知事の許可を免れ、早急に土地を宅地化して他に貸与し私利を収めようとする独断の行為で、農地法第四条に違反し且つ所有者である控訴人先代に対する不法行為である。即ち被控訴人は農地の買受人として、その効力発生前に専ら自らの利益のみのために違法な事実行為によって違法な事実状態を作出したのである。かかる違法状態を自ら作出したものが法律上違法行為前よりも有利な利益を享受することは農地法の精神を踏みにじるものであり、法運用の精神である信義則にももとるものであって許されない。

右のような事情下においては、本件土地は未だ農地というべきものと解釈し、その売買による所有権移転は、なお、農地法第五条の許可を要するものと解すべきである。

二、金二五〇、三〇六円を受領した理由について。

被控訴人は昭和四一年四月二三日控訴人先代亡文吉宅において、同人に対して土地売買代金の内金として金二五〇、三〇六円の受領方を申出た。亡文吉としては本件土地売買は成立していないと考えていたし、当時既に隠居の身で家計はすべて養子である控訴人夫婦に委ね、不動産の管理処分も、たとえそれが自己所有のものであっても控訴人らの協力のもとに行っていたので、前記金員の受領を拒絶したが、温厚な同人は被控訴人の強要に拒み切れず、将来正式に売買契約が成立した場合はそれに充当することとして、保管の意思のもとに受取ったものである。そしてこれに関する証書(甲第四号証)の文案は被控訴人の作成に係るもので亡文吉は被控訴人の求めに応じ、求められるまま作成交付したものである。以上のような事情なるが故に前記金員は現在も控訴人方に保管されている。

三、事情変更の抗弁について。

仮りに本件土地売買契約が成立したとしても、右契約は、当時の環境たりし事情が亡文吉の責に帰すべからざる事由によって予見し得ざる程度に変更しており、したがって右契約の法律効果をそのまま維持することは信義公平の原則に著しく反するものである。控訴人はこの効果の主張にあたり従前の主張を訂正し、まず契約内容の改訂(代金増額請求)を主張し、これが認められない場合契約の解除を主張するものである。

(一)  被控訴人は本件土地一三六坪を昭和三五年九月二二日坪金二、〇〇〇円で買受け、更に昭和三六年三月六日坪金四、〇〇〇円に増額した旨主張している。仮りにそれが事実であるとしても、被控訴人が売買代金の半額を提供したとする昭和四一年四月二三日頃までの間に本件土地は坪当り金七万円以上に高騰していたから、土地価額は約一八倍強の高値に変更されている。

(二)  この点につき被控訴人は、埋立費用を時価に換算すると坪当り金三、〇〇〇円となるから土地の売買価格は坪当り金七、〇〇〇円とみるべきものと主張しているが、この埋立てが違法であることは勿論、本件土地は国道に面しているから、埋立行為がなくとも、つまりそのまま宅地として使用できる状態でなくとも、その保有面積に重点がおかれ、昭和四一年四月当時坪七万以上の価額で取引できたものである。したがって埋立の事実は価格面での考慮に値しない。仮りに改良費として考慮するにしても、それは、その実費として考えるべきであり、その費用は約金一、一八三円であるから、これを前記坪当り価格金四、〇〇〇円に加えても、金五、一八三円であって、なお、一三倍強の高騰となることに変りはない。

次に、被控訴人は本件土地に借地権を有していたから借地人の取得できる売買価格は借地権の価額を差引いた土地価格に対する三割ないし三割五分とみるべきだとする。しかしながら被控訴人の有していたのは借地権ではなく、耕作権であり、その離作料は売買当時坪当り五〇〇円程度であり、現在でも八〇〇円ないし一、〇〇〇円程度であるから殆ど考慮に値しない。

(三)  しかして右土地価格が僅か五、六年の間に約一八倍強の高騰をきたしたことは予想できない出来事であり、もとより控訴人の責に帰すべき事由にもとづくものではない。本件土地は国道に面することになるため、多少の値上りは予測できても、それは通常の物価上昇率程度のことであり、前記の如き高率の上昇を来たすことは到底予期し得ないことであった。ちなみに通常の物価(特に土地)上昇率平均二割位からすれば、五年で二、三四倍、六年で二、八一倍程度にとどまるに過ぎない。したがって坪当り金四、〇〇〇円の本件土地売買契約をそのまま維持し、控訴人に移転登記義務を認めることは、本来給付と反対給付の等価性を本旨とすべき売買契約を極端に不均衡のまま是認することとなり、信義則上不当といわねばならない。

(四)  よって控訴人は被控訴人に対し、本訴(昭和四三年九月一九日、第五回口頭弁論期日)において、第一に本件土地の売買代金を昭和四一年四月当時の時価坪当り金七五、〇〇〇円として一三六坪に対する総額金一〇二〇万円に増額請求をなし、これが認められない場合第二に本件売買契約の解除を主張する。

四、牛乳代金について。

なお、被控訴人と控訴人先代亡文吉間に牛乳取引のなされたことは認めるが、その取引額および牛乳代金と土地代との相殺の意思表示がなされた事実は否認する。

(証拠関係)≪省略≫

理由

当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を参酌しても、なお、被控訴人の本訴請求を正当であると判断する。その理由は次のとおり附加するほか、原判決理由一、三および四の一二行目「農地法第五条の許可は不必要となったものと解せられ」る(記録一九丁表七行目)までの記載と同一であるから、ここに、これを引用する。≪証拠判断省略≫

一、農地の宅地化について。

ところで≪証拠省略≫によれば、従前千葉県東葛飾郡流山町字根尻郷一七五番一、畑六四四平方メートルの本件係争土地は昭和四二年一〇月一四日土地区画整理事業の完了により別紙目録記載の如く換地表示され、同年一一月八日その旨の登記がなされたことが明らかである。

控訴人は右農地を埋立て宅地化したのは被控訴人自身であって、その目的は農地法第五条の県知事の許可を免れ、他に貸与して利を収めようとする独断のもとに違法な事実行為により違法な事実状態を作出したものであるが、このように違法状態を自ら作出したものが違法行為前よりも有利な法律上の利益を享受することは農地法の精神を踏みにじり、信義則に反するから、本件土地は現況宅地であるとしても、法適用のうえにおいては、いまだ農地と解すべきであり、したがって、なお、本件土地の売買については、農地法第五条の許可を要すると解すべきである旨主張する。

しかしながら≪証拠省略≫を総合すると、

本件土地は今でこそ公道に面した宅地であるが、昔は俗にどぶ田といわれた低湿地で周囲に池があり水はけが悪く雨が降るとすぐ水につかる有様で、古くから賃借していた被控訴人も田として耕作はできず、一部を埋立て野菜などを少々作っていたような土地であったこと、昭和三三年一〇月頃附近一帯は流山都市計画流山土地区画整理地区に指定認可され、建設省起業の江戸川河川改修による移転者の収容と健全なる市街地の建設等を目的とし、したがって、本件土地の周辺一帯の農地は当然に宅地化さるべきことを前提として土地区画整理事業が施行され、昭和四二年六月その実質的完成(換地認可)をみた後現実においても農地はほとんど宅地化していること、当初地区中央部に幅員一一米の県道建設が予定されて昭和三五、三六年度において道路用地の買収がなされ、昭和三七年右道路が都市計画街路として決定し、幅員一五米に拡幅されて千葉県による拡幅分の用地買収がなされているが、道路建設に伴い本件土地は直接公道に面することになり、前記のように低湿地のため道路との高低差もひどく、益々水はけも悪くなり、市の方で土砂を供給してくれたので被控訴人は二屯ダンプ車で約一四〇台の土砂を埋立て宅地化したものであること、もともと本件土地について被控訴人は終戦後二回ほど所有者であった亡浅見文吉から有利な条件で買取るよう申込まれたが、その都度断ってきたところ、昭和三五年九月にいたり、本件土地は既に区画整理も進んで近所でも売買しているし、古くから被控訴人の賃借地でもあるから附近の地価の半分位で買取らないかと申込まれ、買受けるに至ったものであること、かかる事情から亡文吉においても将来の宅地化を当然の前提とし被控訴人の前記埋立行為についても格別の異議を述べず、むしろ暗黙の了解を与えていたことが認められる。≪証拠判断省略≫

以上の事実からすれば、被控訴人がいかに旧所有者である亡文吉の了解を得ているとはいえ、農地を勝手に宅地化したことは農地法に違反するものといわねばならないが、前叙の如き事情のもとにおいては(仮りに農地法第五条の申請をしたとすれば許可されるであろうことは容易に推認される)、さきの土地売買契約は農地法第五条の知事の許可なくして効力を生じたものと解するのが相当である。

したがって控訴人のこの点の主張は採用できず、被控訴人の附帯控訴にかかる本位的請求は、右の限りにおいて是認すべきこととなる。

二、牛乳代金との相殺、土地代残金の供託について。

被控訴人と控訴人先代亡浅見文吉との間に牛乳取引のなされたことは当事者間に争がなく、≪証拠省略≫を総合すると、牛乳販売業を営む被控訴人は本件土地の旧所有者であった前記亡文吉の求めにより昭和三四年四月から牛乳を配達するようになったが、代金はまとめて支払うということでその支払をうけないうちに前認定(原判決理由一記載)の如く、昭和三五年九年二二日本件土地を買受けることになったため、右文吉との間で未払牛乳代金は今後の分もあわせ土地代金で精算することと定めその後も引き続き牛乳を配達していたところ、昭和四一年になって土地代金の一部支払を要求されたので同年四月二三日それまでの未払牛乳代金四三、六九四円を土地代金の中に繰り入れることとし、別に現金二五〇、三〇六円を文吉に支払い、文吉はその合計金二九四、〇〇〇円につき領収書を作成し被控訴人に交付していることが認められる。右事実によれば、昭和四一年四月二三日以前被控訴人と亡文吉間には予め未払牛乳代金と土地代金とを相殺勘定すべき旨の合意がなされ、右同日現実にその相殺がなされたものというべく、相殺の有効なることにつき間然するところはない。

なお、控訴人は被控訴人が昭和四一年四月二三日支払った現金二五〇、三〇六円は将来正式に土地売買契約が成立した場合においてはその代金に充当することとして預った保管金である旨主張しているが、その強弁に過ぎること前認定に照らし明らかであって採るに足りない。

次に、供託について附言するに、さきに認定した(原判決理由一記載)、被控訴人が本件土地代残金二三〇、〇〇〇円を供託するに至った事情に弁論の全趣旨をあわせ考えると、被控訴人が右残代金を現実に提供したとしても控訴人側においてこれを受領しないことが明らかであるといわねばならないから、かかる状態のもとにおいては、現実の提供がなされなくとも、前記供託を有効とするに妨げはない。

三、控訴人の事情変更の抗弁について。

仮りに控訴人主張のとおり昭和四一年四月二三日頃までの間に本件土地はその価格が約一八倍強に変更されているとしても、その程度ではいまだ事情変更の原則を適用し得る限りでない。しかも控訴人が右算定の根拠として主張している坪金七〇、〇〇〇円の売却事例は当時としては異例の最高値で土地も一級地であるなら買受人も金融機関であって決算報告に際して問題視されたものであり、かかる特別の事例を除けば一般に坪金二〇、〇〇〇円から三〇、〇〇〇円ていどの価格であったことが原審証人石井欣次、同海老原信蔵の各証言から窺われるし、他方離作料については≪証拠省略≫のように、控訴人自身が支払った分には昭和四二年頃坪一、〇〇〇円以下という事例がないわけではないが、一般には借地権価格として地価の五割、耕作権価格として同七割とする前記海老原信蔵の証言もあって、控訴人が事情変更の具体的内容として挙示するものは、いずれも特別の事例を基礎にしたものであると考えられるにおいては、なおさらのことといわねばならない。また前記一認定の事情からして地価の高騰が全く予想し得ない事情の変更とも受取り難く、その他、さきに認定した(原判決理由一並びに前記一各記載)本件土地売買契約に至った事情、代金の増額、被控訴人と亡文吉との関係、控訴人の思惑等を考慮すれば、前記の本件土地売買契約をそのまま維持することが信義公平の原則に反するとはなし難い。

四、結論

以上の次第で控訴人の本件控訴は理由がなく、被控訴人の附帯控訴は、その予備的請求について判断するまでもなく、本位的請求について正当である。

よって本件控訴を棄却し、附帯控訴にかかる本位的請求を認容し、訴訟費用は控訴、附帯控訴を通じ、当審において生じた分は民事訴訟法第九五条、第八九条を適用してすべて控訴人の負担と定め、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長谷部茂吉 裁判官 石田実 麻上正信)

<以下省略>

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